外国人材が管理職に。全社員共通の評価制度で定着を実現した企業の取組

外国人だから採用したのではない-全社員に同じ基準で向き合う通信キャリアの専門ショップ運営企業の取組

茨城県龍ケ崎市に本社を構える株式会社アドバンスは、通信キャリア専門ショップを茨城県・千葉県・東京・埼玉県・神奈川県で展開するモバイル事業を中核に、外国人材の紹介や登録支援機関としての事業も手がける企業です。従業員数は約425名。そのうち8名が外国人材で、中国、ベトナム、インドネシア、ネパール、台湾と、出身国は多岐にわたります。在留資格は「技術・人文知識・国際業務」が6名、永住者が2名です。
注目すべきは、同社が外国人材のために特別な受入制度を設けているわけではないという点です。人事評価制度やキャリアパス、研修の仕組みはすべて全社員共通。その「国籍で分けない」一貫した姿勢が、結果として外国人材の定着と管理職への登用にもつながっています。
この記事では、同社の採用方針から、評価制度の仕組み、現場の生活サポート、全社員共通の研修まで、具体的な取組を紹介します。「外国人材の受入には特別な制度が必要なのでは」と感じている企業の方にこそ、ヒントになる事例です。

(左から)管理部 戸塚マネージャー、人財グローバル事業部 劉マネージャー

「外国人だから」ではない-株式会社アドバンスの採用方針

同社が外国人材を採用したきっかけは、意図的な「外国人採用枠」の設置ではありませんでした。新卒採用や中途採用の通常プロセスに外国人の応募があり、選考の結果、採用に至ったというのが実態です。
「外国人だからっていう枠組みの中ではなく、新卒採用と中途採用の中に外国人の方の応募があって、弊社の価値観がマッチングして、だから採用したっていうことですね」と、戸塚氏は語ります。
採用基準は国籍を問わず、コミュニケーション能力、考え方、価値観の一致を重視しています。採用されている外国人材の多くが日本への留学経験者で、日本語能力試験N1を取得するなど、入社時点で即戦力となる日本語力を備えています。「ありがたいことに、今、コミュニケーションや文化についてはあまり課題を感じていないんです。日本語のコミュニケーションが既にとれる方が入社してくださっているからですね。」と戸塚氏は話します。
人事配置にも柔軟な工夫があります。外国人のお客様が多い店舗に、通勤可能な外国人材を配置するといった対応も行っています。外国人材の語学力を活かせる場所に配置することで、本人の強みと顧客ニーズの双方に応えています。
同社はモバイル事業で外国人材を雇用する「受入企業」であると同時に、人財グローバル事業部では登録支援機関として他社の外国人材受入を支援する「支援企業」でもあります。さらに、ベトナムやインドネシアの海外大学と連携してインターンシップを実施するなど、グローバルな採用戦略も展開しています。受入と支援の両方の現場を知る企業だからこそ、自社の受入体制にもその知見が活きているといえます。

全社員に同じ基準を-人事考課制度の「見える化」とキャリアパス

同社の外国人材の定着を支えている最大の特徴は、国籍を問わず全社員に適用される、透明性の高い人事制度です。「外国人材向けの特別な評価基準」は設けていません。全社員が同じ基準で評価され、同じキャリアパスを描ける仕組みが整備されています。

人事制度ガイドブックとモデル年収の全社員公開

同社には「人事制度ガイドブック」があり、就業規則や給与規程とともに、グループウェア上で全社員がいつでも閲覧できる状態になっています。何を基準に評価されるのか、どうすれば給与が上がるのか―その仕組みが誰にでも見える状態に置かれていることが、外国人材にとっても安心材料になっています。
さらに、モバイルショップと法人営業それぞれのモデル年収も公開されています。これは外国人・日本人の区別なく適用されるもので、「この会社でどのくらいのキャリアを積めばどの水準の収入が得られるか」が、入社前から明確に分かるようになっています。

月1回の1on1面談と半年に1回の人事考課で目標と悩みを共有

評価の運用面では、月1回の1on1面談(MBO=目標管理制度)と、半年に1回の人事考課の2種類の仕組みを組み合わせています。
月1回の1on1面談では、上司が部下に対して最低30分の時間を確保します。ただし、個人目標の進捗確認だけが目的ではありません。「人間関係の悩みとか、普段は発言できないような目に見えないものを吸い上げる方がメインですね。離職に関わってくるものなので。」と戸塚氏は語ります。

月1回の1on1面談の様子(写真:企業提供)

この仕組みは外国人材のためだけのものではなく、全社員に適用されています。しかし、異国で働く外国人材にとって、「毎月必ず自分の話を聞いてもらえる場がある」ことの安心感は大きいはずです。半年に1回の人事考課では、より中長期的な目標設定と進捗のフォローを行います。さらに、定期実施の管理職向け社長ヒアリングや、全社員を対象とした社長面談の試みも始まっており、経営層との距離の近さも同社の特徴です。

スペシャリストから管理職へ-外国人材にも開かれたキャリアパス

キャリアパスの設計にも、「国籍で分けない」方針が貫かれています。社員は入社後、まずその道のプロである「スペシャリスト」としてキャリアをスタートし、面談を重ねる中で管理職(ゼネラリスト)を目指す道への転換も可能です。
この制度のもとで、実際に外国人材が管理職として活躍しています。人財グローバル事業部の劉氏はマネージャーとして事業部を率いています。
評価基準が明確で、昇進の道筋が見えているからこそ、外国人材も安心して長期的なキャリアを描くことができます。「頑張ればこうなれる」という具体的なロールモデルが社内にいることは、後から入社する外国人材にとっても大きな指針になっています。

来日前の住居探しからゴミ出しまで-現場が支える生活サポート

透明な人事制度だけでは、外国人材の定着は実現しません。同社のもうひとつの強みは、制度の隙間を埋める「現場の伴走文化」です。

来日前から始まる伴走型の初期支援

2025年10月に入社したインドネシア出身の社員の受入にあたっては、劉氏自身が来日前から準備を進めました。地元の不動産屋に連絡して物件を探し、候補を本人に提案。来日後はスムーズに入居できるようサポートしています。賃貸契約の緊急連絡先には劉氏や日本人スタッフが名前を登録し、本人の負担を軽減しました。
入居後も、市役所での手続きや銀行口座の開設に一緒に足を運ぶなど、手厚い初期サポートが続きます。「ほぼこちらでサポートしながら、一緒に市役所に行ったりしてやっています」と劉氏は話します。

「公的機関を頼る前に、社内で吸い上げる」サポート文化

こうした支援が機能している背景には、制度化された面談と日常のコミュニケーションを通じて、困りごとが早い段階で社内に共有される文化があります。
「もう自分たちで教えられるから、行政などの公的機関を頼る前に、こちらで吸い上げちゃうんですよね。」劉氏のこの言葉は、メンター面談などの制度が形だけのものではなく、実際に機能していることの証です。
生活面の課題への対応も現実的です。ゴミ出しのルールは説明しても理解が難しい場合があります。その場合、同社では「会社に持ってきてください」と伝えています。社内に産業廃棄物用のストッカーがあるため、そこで対応できるからです。
「地域に迷惑をかけないように対応しています」と劉氏。理想論ではなく、実際に機能する解決策を選んでいる点に、同社の姿勢が表れています。
新人の育成面では、「シスター/ブラザー制度」と呼ばれる伴走型のOJTも導入されています。先輩社員が新人に寄り添いながら業務を教える仕組みで、これも外国人材専用ではなく全社員に共通の制度です。

国籍を問わず全社員で学ぶ-研修・交流の取組

同社では、外国人材だけを対象とした研修は設けていません。「国籍などは一切関係なく、共同で一緒に働いているという方針です」と劉氏が語るように、すべての研修・学びの機会は全社員に共通で提供されています。
全社員向けの勉強会は年に10回程度開催されており、テーマは食事のマナー、生成AI、近代史など多岐にわたります。外国人材向けの内容ではありませんが、日本の文化やビジネス慣習に触れる機会として、結果的に外国人材にとっても有意義な学びの場になっています。

生成AI活用塾(写真:企業提供)
国会議事堂見学ツアー塾(写真:企業提供)

福利厚生としての社員旅行も特徴的です。選定先は日本の歴史や伝統、文化を感じられる場所が選ばれますが、「これは外国人だからというわけではなく、社員全員に対してです」と担当者は強調します。

福利厚生 社員旅行集合写真(写真:企業提供)

また、全社員が参加する年に一度の社内説明会後の懇親会は、ビュッフェスタイルで開催し、2025年9月には浅草で約400名規模の会が行われました。
企業でチケットを入手した際には、大相撲観戦の機会を外国人材に優先的に案内することもあります。日本文化に触れるきっかけづくりとして、ちょっとした配慮が日常的に行われています。
スキルアップの面では、eラーニングなど全社員が無料で利用できる学習機会が提供されています。加えて、茨城県の日本語学習eラーニングも社員に推奨しており、「私も登録しています」と劉氏自身も活用しています。
地域との関わりも積極的です。龍ケ崎市の国際交流協会が主催するゴミ拾い活動に外国人・日本人のスタッフが一緒に参加したり、茨城県指定無形民俗文化財の撞舞保存会への寄付による関わりを持つなど、地域社会との接点を持つことで、外国人材が地域に溶け込むきっかけにもなっています。

担当者・外国人材の声

劉氏は、入社当初は数少ない外国人材の一人として日本文化を学ぶ側でした。同時に、中国文化を社内に発信する役割も担っていたといいます。そこから経験を積み、現在は人財グローバル事業部のマネージャーとして、外国人材の採用から生活支援まで幅広く携わっています。
仕事のやりがいについて、劉氏はこう語ります。「仕事を任されて、指名されて、皆さんと一緒に事業部を盛り立て、会社や地域の社会にも貢献していくことに、非常にやりがいを感じております。」
一方、戸塚氏は、認定制度への申請を通じた気づきについてこんな声もありました。「正直に申し上げますと、今回こういう多言語の安全衛生教育ツールがあるのだなと、初めて知りました。」
完璧な体制がすでに出来上がっているのではなく、認定制度をきっかけに新たな知見を得ながら改善を続けている-その正直な姿勢もまた、同社の取組のリアルな一面です。
同社が茨城県外国人受入優良企業等認定制度を知ったのも、インドネシア人材受入セミナーに役員が参加した際に、県から配布されたチラシを見たのがきっかけでした。外部の研修や公的機関の情報に積極的にアクセスする姿勢が、自社の取組をさらに前に進める原動力になっています。

仕事のやりがいを語る劉氏

株式会社アドバンスの取組ポイントまとめ

同社の取組から、外国人材の採用・定着を考える企業が自社に取り入れられるポイントを整理します。

採用基準を「国籍」ではなく「価値観の一致」に置く

外国人採用枠を特別に設けなくても、通常の採用プロセスの中で価値観やコミュニケーション能力を基準に選考することで、定着率の高い人材の確保につながります。

人事評価制度を「見える化」する

就業規則、給与規程、人事制度ガイドブックをグループウェアで全社員に公開し、評価基準とキャリアパスを誰もが確認できる状態にしておくことが、国籍を問わず社員の安心感と納得感を高めます。

月1回の1on1面談で「目に見えない悩み」を吸い上げる仕組みをつくる

業績の進捗確認だけでなく、人間関係や生活上の困りごとを早期にキャッチする場として機能させることで、離職防止に直結します。

キャリアパスを明確にし、管理職への道を開く

スペシャリストからゼネラリスト(管理職)への転換が可能なキャリアパスを整備し、実際に外国人材が管理職・店長として活躍している実例をつくることで、後に続く人材のモチベーションを高めます。

来日前から伴走する生活支援を、特定の担当者が主導する

住居探し、行政手続きの同行、緊急連絡先の登録など、初期段階の不安を一つずつ取り除く実務的なサポートが定着の土台になります。

「外国人材向け」ではなく「全社員共通」の研修・学びの場を設ける

勉強会、社員旅行、懇親会を全社員共通で実施することで、特別扱いではない自然な形での異文化理解とチームの一体感が生まれます。

外国人材の採用・受入でお悩みの企業様へ

同社の事例は、「外国人材の受入には特別な制度を一から構築しなければならない」という思い込みに、ひとつの答えを示しています。自社の人事制度を整備し、全社員に同じ基準で向き合うこと。その土台の上に、現場の丁寧なサポートを重ねること。この組み合わせが、外国人材の定着と活躍を支えていました。
「自社の制度で外国人材を受け入れられるのか分からない」「評価制度やキャリアパスをどう整えればいいか悩んでいる」「生活支援をどこまでやるべきか判断がつかない」―そうしたお悩みをお持ちの企業様は、茨城県外国人材支援センターにご相談ください。
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