外国人材の受入は「まず日本人が学ぶ」から-従業員12名の建設会社が実践する定着支援

ハウスクリーニング付き社員寮、日本人向け勉強会、経営者の日々の声かけ―茨城県外国人受入優良企業認定企業の受入事例

建設業の人手不足に、「育成」と「支援」で向き合う

建設業界の人手不足は、茨城県内の中小企業にとっても切実な課題です。そんな中、石岡市で総合建設業を営む小桜建設株式会社(従業員12名)は、インドネシア出身の技能実習生2名を受け入れ、生活・コミュニケーション・キャリア・地域交流のすべてにわたる独自の支援体制を築いています。
その根底にあるのは、代表取締役の関氏の「外国人材を迎えるなら、まず受け入れる側の日本人が学ばなければならない」という考え方です。監理団体に任せきりにしない初期サポート、定期的なハウスクリーニングまで会社負担で行う社員寮、経営者自らの日々の声かけ―。小規模だからこそ可能な、密度の高い受入体制の全容を取材しました。
建設業で外国人材の採用を検討中の企業や、受入環境の整備に課題を感じている企業の担当者に、具体的なヒントをお届けします。

(左から)関代表取締役、リズキ氏、武川氏、中村氏

小桜建設株式会社と外国人材採用のきっかけ

外国人材を採用したきっかけについて、関氏はこう語ります。
「まあまあ、一般的な理由と同じですね。もちろん人材不足っていう部分もありますけども、日本で勉強していただいて、本国に帰っていただいて、そちらでご活躍されることの支援をしたいという、この2つが大きな理由になります。」
人材不足への対応と、技能実習制度の本来の趣旨である国際貢献。この2つの動機が、数年前の受入開始につながりました。

「我々が学ばないと分かり合えない」-受入前に始める日本人向け勉強会

同社の受入体制を語る上で欠かせないのが、外国人材が来日する前に、日本人従業員向けの異文化理解勉強会を開催していることです。
「数年前に、彼ら(インドネシア人技能実習生)が初めて来た時は、やっぱりみんなを集めて勉強会を開いてやったり、監理団体の方にもちょっと手伝ってもらいながらやりました。宗教的な文化の違いがあるから、日本人から彼らにやっちゃいけないこともあるんでね。」と関氏は振り返ります。
勉強会では、インドネシアの文化や宗教(ラマダン、お祈りの習慣)、接する上での注意点などを、監理団体の協力も得ながら全従業員で学びます。これは受入時の一度きりではなく、年1回のペースで継続的に実施しているとのこと。 この取組の背景にある関氏の考え方は明確です。
「彼らはね、向こうで日本のことは勉強してくるんですよ。(でも)我々は勉強する機会がないんで。どっかでこう会社として(機会を)設けないと、お互いに分かり合えないところが出てくるんで。」
外国人材に日本語や日本文化への適応を求めるだけでなく、受け入れる側の日本人が相手の文化を学ぶ。この双方向の歩み寄りが、同社の受入体制全体を貫く基本姿勢になっています。
勉強会で培われた理解は、日々の現場にも反映されています。現場ではお祈りができるスペースを確保し、忘新年会の席ではハラルに配慮して食材を事前に説明するなど、宗教や文化への配慮が自然に実践されています。

監理団体任せにしない生活支援の仕組み

同社では、技能実習生の生活面のサポートを監理団体だけに委ねるのではなく、会社として主体的に取り組んでいます。その仕組みは、住環境の整備から行政手続きの同行、日常生活のルールづくりにまで及びます

即入居可能な社員寮と定期的なハウスクリーニング

同社では、技能実習生のために会社契約の社員寮を用意しています。家具・家電一式は会社が備え付けており、来日したその日から生活できる環境が整っています。
特筆すべきは、会社負担で定期的なハウスクリーニングを導入していることです。
「定期的なハウスクリーニングですね。バス・トイレのクリーニングは入れてます。新しく迎える時には、きれいな状態で気持ちよく入っていただこうと。油を使う料理が多いので、住んでいる途中にも入れています。」
インドネシアの食文化では油を多く使う料理が一般的です。その生活習慣を理解した上で、住環境を快適に保つためにハウスクリーニングを会社負担で実施する。住居の「確保」にとどまらず、住環境の「維持」まで踏み込んだ取組です。

市役所・銀行・携帯電話の手続きに社員が同行

来日直後の行政手続きについても、市役所への届出、銀行口座の開設、携帯電話の契約といった手続きに社員が同行してサポートしています。監理団体に任せるだけではなく、しっかりと会社として市役所、銀行とか携帯の手続きまでフォローしています。
雇用契約書はインドネシア語で併記し、社会保険の説明には厚生労働省が公開しているインドネシア語版のパンフレットを活用。公的資料を使うことで、正確かつ分かりやすい説明を実現しています。

生活ルールのラミネート掲示と自己評価シートの連動
社員寮には、生活上の決まりごとを一覧にしたラミネートが掲示されています。ゴミ出しのルールや生活マナーなどを「見える化」することで、口頭の説明だけでは伝わりにくい内容を確実に共有する仕組みです。

経営者との距離の近さが生むコミュニケーション

従業員12名という規模の同社では、代表取締役と技能実習生の距離が非常に近く、その近さを活かしたコミュニケーションが日常的に行われています。

帰宅時の声かけと体調不良時の訪問サポート

当者はこう話します。
「毎日、帰宅前には挨拶に来るんですね。その時に代表取締役から『ちょっと咳してるけど、風邪ひいたんじゃないの』とか、『自転車の電気切れてたよね』とか、そういった心配をしたりとかっていうのは、これはもう日々ありますね。」
業務上の報告や指示の場ではなく、帰宅前の何気ないやり取りの中で体調や生活の変化に気づく。小さな気づきの積み重ねが、問題の早期発見につながっています。
体調不良の際には、社員寮を訪問し、近隣の病院の情報を提供したり、必要な物資を買い出したりといった具体的なサポートも行っています。また、コミュニケーションツールとしてWhatsAppを導入し、グループと個別の連絡網を整備。会社にいない時間帯でも相談できる体制を確保しています。

「困った時の相談相手は社長さん」

日々の声かけと生活支援の積み重ねは、確かな信頼関係として結実しています。インドネシア出身の技能実習生・リズキ氏に「困った時、誰に相談しますか?」と尋ねたところ、返ってきた答えはひとこと「社長さん」。
経営者が自ら技能実習生の生活に目を配り、祭りに連れ出し、日々声をかけ続けた結果が、この一言に凝縮されています。関氏は実際に、初詣や地域のお祭りにも自ら技能実習生を連れて行っています。「(実習生が)カメラが好きだから、祭りを撮りたいって言うんでね」と笑う関氏の言葉からは、制度上の義務としてではなく、同じ会社で働く仲間としての自然な関わり方がうかがえます。
また、外国人材の名刺には母国語を併記するなど、細やかな配慮も行き届いています。

インタビューに応える関代表取締役とリズキ氏

スキルアップ・キャリアアップを会社が全面的に支援

同社では、技能実習生のスキルアップやキャリアアップに関わる費用を基本的に会社が全額負担しています。
年2回(6月と12月)、代表取締役と技能実習生が1対1で面談を実施。自己評価チェックリストをもとに現状を把握し、今後の目標設定を行っています。この評価は直接的な賃金変動に結びつくものではありませんが、技能の習熟度を確認し、本人のキャリアプラン(特定技能への移行希望など)をヒアリングする場として機能しています。
技能講習(フォークリフト等)の受講費用や、日本語能力試験(JLPT)の受験費用は会社が負担し、学習用テキストも提供しています。技能実習の移行試験に向けたサポートも手厚く、練習、手続き、試験当日まで一貫して寄り添います。
「試験に向けて練習させるし、一緒にする。試験を受けさせるための手続きも。最後まで面倒を見る。そのようにやらないと移行もできないんだけどね。」
この言葉からは、制度上必要だからやるという義務感以上に、「最後まで面倒を見る」という姿勢がにじみます。さらに、技能実習の期間が終了した後についても、「メンバーの方が残りたいんだったら、うちは全然いいよ。」と、特定技能への移行を受け入れる意向を本人に伝えています。

地域の一員として-道路の里親制度や清掃活動への参加

同社では、外国人材が地域社会に溶け込むための機会を意識的に設けています。
茨城県には、県が管理する道路の清掃や除草などの美化活動をボランティア団体が行う「道路の里親制度」があります。小桜建設はこの制度に登録し、技能実習生も一緒に活動に参加しています。
「この道路は小桜建設さんの(きれいにしている)道路ですよって看板を立てて、そこをボランティアで美化活動するわけです。そういうのを一緒に取り組んだりしてね。」
建設業協会の清掃活動にも参加し、地域住民と交流する機会を作っています。業務とは異なる場面で地域の人々と顔を合わせることが、技能実習生にとって「地域の一員」としての実感につながっています。

小桜建設株式会社の取組ポイントまとめ

以下は、小桜建設の取組から他の企業が自社に取り入れる際のアクションリストです。

日本人従業員向けの異文化理解勉強会を受入前に実施し、年1回継続する

監理団体にも協力を依頼し、宗教・文化の違いや接し方の注意点を全員で学ぶ

社員寮は家具・家電付きで即入居可能な状態を整え、定期的なハウスクリーニングも会社負担で実施する

食文化の違いを踏まえた住環境維持の工夫として有効

行政手続き(市役所・銀行・携帯電話)に社員が同行し、監理団体任せにしない

雇用契約書の母国語併記、公的パンフレットの多言語版活用も組み合わせる

生活ルールをラミネート掲示で「見える化」し、自己評価シートと連動させる

日々の行動の振り返りと面談での目標設定に活用する

経営者や役員が帰宅時の声かけを日常的に行い、体調や生活の変化に気づく体制を作る

WhatsApp等のツールで社外でも相談できる連絡網を整備する

技能講習・日本語試験・移行試験の費用を会社が負担し、キャリアアップを全面支援する

年2回の面談で本人の希望を丁寧にヒアリングする

地域のボランティア活動や祭りへの参加を通じて、地域住民との接点を作る

「道路の里親制度」など地域の既存の仕組みを活用する

担当者の声

取材を通じて印象的だったのは、同社の取組が特別な「施策」としてではなく、日常の延長線上にあることでした。帰宅前に声をかける、体調が悪ければ寮を訪ねる、祭りに一緒に出かける。一つひとつは小さなことですが、それを日々積み重ねることで、リズキ氏の「困ったら社長に相談します」という言葉に象徴される信頼関係が生まれています。
「我々が学ばないと分かり合えない」という関氏の言葉は、外国人材の受入を検討するすべての企業にとって示唆に富むものです。外国人材に変わることを求める前に、まず自分たちが一歩踏み出す。その姿勢が、同社の手厚い受入体制の出発点になっています。

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