全社員に公平なキャリアパスと、ムスリム社員一人ひとりへの配慮を両立する受入体制
茨城県水戸市に本社を置くシステム開発会社・株式会社ユードムでは、インドネシア、中国、韓国出身の外国人材10名が、日本人社員と同じフィールドで活躍しています。
同社の取組で注目すべきは、キャリアパスの明文化や資格取得支援といった「国籍を問わない公平な人事制度」と、ムスリム(イスラム教徒)社員の礼拝・食事・住居への「一人ひとりに寄り添う個別配慮」を、高いレベルで両立させている点です。
「外国人材を採用したいが、どこまで特別な対応をすべきか分からない。」
そんな悩みを抱える県内企業にとって、同社の実践は具体的なヒントに満ちています。総務部課長補佐の益子氏と、インドネシア出身で県立IT短大卒業生でもあるエンジニアのディアナ氏へのインタビューから、その取組の中身をご紹介します。

株式会社ユードムと外国人材採用の背景
株式会社ユードムは、1976年創業のシステム開発会社です。業務系・組込系ソフトウェアの設計・開発を中心に、クラウド導入支援やIoTシステム開発まで幅広く手がけています。従業員数は約400名。茨城県水戸市の本社に加え、東京本社、土浦支社、名古屋事業所を展開しています。
同社では現在、インドネシア、中国、韓国出身の外国人材10名が在籍しています。在留資格は「技術・人文知識・国際業務」が8名、永住者が2名。採用は主に国内の大学や短期大学を卒業した元留学生が中心で、日本での基礎的な生活習慣を既に有している方を迎え入れています。
昨年はインドネシア、中国の新入社員が同じ研修を受け、日本語を共通言語として業務にあたる多国籍な職場は、同社では日常の風景です。過去にはモンゴルやフィリピン出身の社員も在籍しており、多様な人材と共に働くことが「当たり前」の企業文化が根づいています。
国籍を問わない、全社員共通の人事制度
同社の外国人材受入体制を語るうえで、まず押さえるべきは「外国人材だから設けた制度ではない」という点です。キャリアパス、人事評価、資格取得支援のいずれも、国籍に関係なく全社員に公平に適用される仕組みとして設計されています。
等級制度とキャリアパスの明文化
同社では、職位ごとに等級が設定されており、昇格に必要な経験年数や保有資格の要件が社内規定に明記されています。この規定は社員であれば誰でも閲覧可能です。
「ある職位に上がるときには、大卒以上で現職位の実務経験が4年必要ですが、基本情報処理技術者以上の資格を有する場合は、4年のところを2年に短縮されます。」と益子氏。キャリアアップの道筋と条件が明確に示されていることで、外国人材も「次に何をすれば昇格できるのか」を具体的に理解し、目標を立てやすくなっています。
クラウドツールを活用した透明な人事評価
人事評価は、クラウド型の人事管理ツールを活用して運用しています。半年に一度、社員が自己評価を入力し、上長の評価と照らし合わせたうえで1on1面談を実施。「自分はこうできてると思ってるかもしれないけど、実はこうだよ」「逆にできてないと思ってるけど、こんなふうにできてますよ」と、認識のズレを一つひとつすり合わせていくプロセスです。
評価が数字やランクだけで一方的に通知されるのではなく、対話を通じて相互理解を深める仕組みになっている点が、外国人材を含む全社員の納得感につながっています。
資格取得奨励制度のダブルインセンティブ
同社には、会社が定めた83の対象資格に合格するごとに一時金を支給する「資格取得奨励制度」があります。
「一時金は1万円から30万円まで。さらにE1以上のクラスで特定の資格を持っていると、月々の資格手当も入ってくる。」と益子氏は説明します。
一時金と毎月の資格手当という二重の報奨がスキルアップの動機づけとなり、外国人材にとっても「日本でキャリアを築いていける」という実感が得やすい制度です。さらに、内定の段階からオンライン研修サービスのアカウントが付与され、入社前から学習を始めることができます。
若手全員を支えるメンター制度と面談の二段構え
同社では、入社1年目から3年目の若手社員全員を対象に「メンター制度」を設けています。ポイントは、メンターが直属の上司や先輩ではない点です。直属の関係から離れることで、業務上の悩みだけでなく、日常の困りごとや将来のキャリアについても率直に相談しやすい環境をつくっています。
「外国人というところではなくて、全社員に対して実施しています」と益子氏。四半期に一度、会社から補助が出る食事会の場も用意されており、カジュアルな雰囲気の中で対話が生まれる設計です。
さらに、日々の困りごとを拾い上げる「3ヶ月に1回の1on1ミーティング」と、中長期的なキャリアプランを話し合う「年に1回のキャリア面談」を組み合わせた二段構えのサポート体制があります。キャリア面談のシートには「上司には見えない意見欄」が設けられており、さらに上の役職者にだけ率直な意見を伝えられる仕組みも整っています。こうした透明性と風通しの良さが、国籍を問わず社員が安心して働ける基盤になっています。
ムスリム社員の宗教・文化に寄り添う具体的な配慮
ここまで紹介してきた人事制度は、すべて「全社員共通」の仕組みです。一方で同社は、社員一人ひとりの宗教や文化的背景に対しても、具体的かつ丁寧に対応しています。その象徴的な存在が、インドネシア出身のディアナ氏です。イスラム教徒であるディアナ氏が安心して働けるよう、同社はさまざまな場面で配慮を重ねてきました。
勤務時間中の礼拝を認め、スペースを確保
イスラム教徒は1日5回の礼拝を行います。ディアナ氏の場合、勤務時間中に10分ほど業務を離れて礼拝を行う必要がありますが、同社ではこれを入社前の面接段階から本人と確認し、許可しています。
「先輩に『ちょっとお祈りしますので離れます』って言ったら全然大丈夫です。場所は、空いている会議室でやっています。」とディアナ氏。日常の業務の中に礼拝が自然に組み込まれています。
入社直後の新人研修では、他社の新入社員も参加する合同研修の場で、「後ろの方でお祈りなどをされていますが、宗教上の理由なのでご承知くださいね」と企業側から事前に説明を行いました。周囲の理解を得るための丁寧な対応が、ディアナ氏が安心して研修に臨める環境をつくっています。
ハラル対応の食事を毎回のイベントで手配
イスラム教の戒律では、豚肉やアルコールを含む食材が禁じられています。ユードムでは、新年会や懇親会などの社内イベントのたびに、ディアナ氏が食べられるメニューがあるかどうかを事前に確認しています。
「いつもは会社の方から先に連絡が来て、『これ大丈夫ですか?』ってメニューの確認をしてくれます」とディアナ氏。2026年1月の新年会でも、事前にメニュー確認が行われました。
企業側の対応は、単に「ハラル対応でお願いします」と伝えるだけではありません。「具体的にはこう、みりんがダメでとか、まな板分けてとか、そういう話もセットで伝えています。」と益子氏。ハラルの知識を持ったうえで会場と具体的な交渉を行い、対応が難しい場合は別途弁当を手配するなど、徹底した対応を続けています。
生活の利便性を最優先した住居選定
入社前の住居手配にも、宗教的な配慮が反映されています。ディアナ氏の場合、入社後3ヶ月間の研修期間中の住居を会社が手配しましたが、研修所近くの物件ではなく、ハラルフードが購入できる店舗が近い場所を優先しました。
「ムスリムなのでハラルフードの食事がなかなか難しい。研修所に近い物件だと買い物に困るので、本人と話をして、少し遠くなってもハラルフードが買える場所の近くに3ヶ月間の住まいを借りました。」と益子氏は振り返ります。
研修終了後は、ディアナ氏自身がモスクとハラルフード店に近い場所に住居を見つけ、生活基盤を確立しました。「私は、モスクが近くにあることと、ハラルレストランが近くにある場所が一番いいので。(職場から多少遠くても)現在の住居を選びました。」企業の手厚いサポートと本人の主体性が組み合わさることで、安心できる生活環境が実現しています。
未経験からの成長を後押しする3ヶ月間の新人研修
ユードムでは、日本人・外国人を問わず全新入社員を対象とした3ヶ月間の新人研修を実施しています。社会人としての基礎から業務に必要な技術知識まで、ゼロからカバーする手厚い内容です。
ディアナ氏は、この研修のおかげでスムーズに業務に入ることができたと語ります。「IT短大で勉強していないことでも、本当に研修の時に最初からですので、慣れました。入りやすいかなと思います」。
入社時の日本語レベルはN2だったディアナ氏は、働きながら日本語能力試験N1に挑戦し、見事合格しました。研修中に大学時代の先生から勧められたことがきっかけで、土日や平日の夜にその先生のもとに通い、勉強を続けました。
業務の中では、日本語のニュアンスの違いに向き合う場面もあります。
「報告するときに、自分のニュアンスが日本人の感覚と違うところがあって、『私が思ってるのはこれなんですけど、ちょっと違います』って言われることもありました。なので、『これで合ってますよね』っていうことを話してから報告するようにしています。」
こうした課題に対して、回避するのではなく、自ら確認のプロセスを加えることで乗り越えようとしています。
多様性がさらに広がる今後の展望
同社では、外国人材が職場だけでなく地域の中でも活躍しています。毎年開催される水戸黄門漫遊マラソンには、ボランティアとしてブースを出展。外国人材もメンバーとして運営に参加しており、地域社会の一員として存在感を示しています。
過去には、ディアナ氏がテレビ番組の取材を受けたこともあります。その放送日には、社員が視聴する場を設けたとのこと。社員の活躍を会社全体で応援する温かい企業文化がうかがえます。
今後の採用計画にも、同社の多様性に対する姿勢が表れています。来年度には、視覚に障害のある外国人学生の採用が決定しています。国籍や文化的背景だけでなく、一人ひとりの個性や状況に向き合いながら受入体制を整えていく。同社の取組は、これからも進化を続けていきます。

株式会社ユードムの取組ポイントまとめ
キャリアパスを社内規定で明文化し、昇格条件を全社員が閲覧できるようにする
外国人材も「次に何をすればいいか」を自分で確認でき、目標設定がしやすくなる。
人事評価は自己評価と上長評価の1on1すり合わせで運用する
一方的な通知ではなく対話型にすることで、文化的背景が異なる社員にも納得感のある評価が実現する。
資格取得支援は「合格一時金+月々の資格手当」の二重構造にする
スキルアップの動機づけとして強く機能し、長期的なキャリア形成を後押しする。
メンターは直属の上司・先輩以外から選任する
利害関係のない相手だからこそ、率直な相談がしやすい。会社補助付きの食事会も有効。
ムスリム社員の礼拝は、入社前の面接段階で本人と確認し、空き会議室の利用を認める
合同研修等では周囲への事前説明も行い、自然な理解を促す。
社内イベントのハラル対応は「ハラル対応で」と伝えるだけでなく、具体的な禁止食材や調理器具の使い分けまで会場と交渉する
対応が難しい場合は別途食事を手配する。
住居選定では、宗教的な生活習慣(礼拝・食事)に必要な施設へのアクセスを優先する
研修所や職場への近さだけでなく、本人の生活の質を基準に判断する。
担当者と外国人材の声
益子氏は、同社の外国人材受入について「外国人だからこうする、ということではなくて、全社員に対してフェアな仕組みを整えるのが基本です。そのうえで、一人ひとりの事情に応じて対応していく。それは日本人社員に対しても同じことです」と語ります。
ディアナ氏は、日本での仕事と生活についてこう話してくれました。
「本当に礼拝もちゃんと時間通りにできますし、全然知らないことでも最初から教えていただいて調整できるところとか、ハラルの関係も本当に安心して仕事できて、イベントに参加できて。本当によかったと思います。」
「今は、ここで色々な経験を重ねたい。しばらくは日本かなと思います。」
公平な制度が土台にあり、その上で個別の配慮がしっかりと行われているからこそ、ディアナ氏はこの会社で安心して働き、成長を続けることができています。
外国人材の採用・受入でお悩みの企業様へ
株式会社ユードムのように、外国人材の採用や受入体制の整備に取り組みたいとお考えの企業様は、茨城県外国人材支援センターにご相談ください。
同センターでは、専門のアドバイザーが在留資格の選定から採用活動の進め方、受入後の定着支援まで、無料でサポートしています。「何から始めればいいか分からない」という段階からでもご相談いただけます。