技能実習生の受け入れ事例:建設会社が実践する「鶏の日」と安全標識の多言語化

従業員15人の建設会社が、インドネシア人実習生と築いた受入体制

茨城県坂東市で土木・舗装工事を手がける株式会社俊光建設は、従業員15人のうち5人がインドネシア出身の技能実習生という建設会社です。人手不足をきっかけに技能実習生の受け入れを始めた同社は、インドネシア語での雇用契約書や安全標識の整備といった制度面の対応に加え、毎月の給料日にインドネシアの食文化に合わせた鶏肉料理を全従業員にふるまう「鶏の日」など、独自の取組を実践しています。
建設業で外国人材の採用を検討しているものの、「受入体制をどこまで整えればいいのか分からない」「言葉の壁が不安」と感じている企業は少なくないのではないでしょうか。この記事では、俊光建設の担当者への取材をもとに、雇用契約・安全教育から日々の生活支援、キャリア形成、そして率直に語られた課題まで、同社の取組を具体的にお伝えします。

(左から)飯田取締役、イルヴァン氏

人手不足を背景に技能実習生の受け入れを決断

同社がインドネシアからの技能実習生を受け入れた理由について、担当者は率直にこう語ります。
「第一には、正直、人手不足がありますよね。本当の正直に言っちゃいますと。」
建設業界では就業者の高齢化と若手の入職者不足が続いており、従業員15人規模の同社にとっても人材の確保は経営上の大きな課題でした。そうした状況の中で技能実習制度を活用し、インドネシアから実習生を迎え入れることを決断します。
もっとも、受け入れ当初は社内に不安がなかったわけではありません。「正直、みんな(懐疑的な)気持ちでした」と担当者は振り返ります。ところが、その空気が変わるのに長い時間はかかりませんでした。
「ただ、1ヶ月経ったらもう全然。逆に何だろう、みんなうちの他の従業員の方たち、50歳ぐらい超えてるんで、子供みたいな感じですよ、自分たちの。」
実習生の素直な人柄に触れたベテラン従業員たちが、自然と面倒を見るようになったといいます。「言い方はきつい時とかも正直あるんですけど、なんだかんだ面倒見てあげている」と担当者は笑います。休日には実習生から「どこどこ買い物行きたいから」と連絡が入り、会社を通さず従業員が自発的に連れて行くこともあるそうです。

雇用契約から安全教育まで-制度面の誠実な対応

インドネシア語の雇用契約書と給与説明の徹底

同社では、雇用契約書をすべてインドネシア語に翻訳したものを用意し、内容を説明した上でサインをもらう手順を徹底しています。給与についても、面接の時点で総支給額、税金の控除額、手取り額を明示して募集をかけているため、「(給与の認識齟齬は)ないです」と担当者は話します。
社会保険の説明には、技能実習生が来日時に受け取る「技能実習生手帳」や、日本年金機構が公開しているインドネシア語の資料を活用しています。「技能実習生手帳がよくまとまっているので、これをちょっと利用させてもらっています」とのこと。既存の公的資料を丁寧に探して活用する姿勢がうかがえます。

担当者自らインドネシア語を調べて作成する安全標識

建設現場での安全管理においても、同社は地道な対応を続けています。現場や事務所に掲示する安全標識に、担当者自らインドネシア語を調べて併記しているのです。
「手間ではありますけど、やっぱりやらなきゃいけないことなんで。」
この言葉に、同社の安全に対する姿勢が表れています。標識の多言語化に加え、建設現場での安全確認動作である「グーパー運動」や避難訓練も実施し、実習生が安全に作業できる環境を整えています。

毎月の給料日は「鶏の日」-食文化への配慮が生む安心感

同社の取組の中でとりわけ目を引くのが、毎月の給料日に行われる「鶏の日」です。
「鶏が好きなんですね、インドネシアって。フライドチキン買ってきたり、焼き鳥買ってきたり。日本人は刺身とかがいいんですけど、ちょっと技能実習生のことも考えて、夕飯の一品になるようなものを提供しています。『鶏の日』っていう感じで。」
日本とインドネシア、双方の食文化を尊重しながら、「会社からの感謝」を食事というかたちで伝える福利厚生です。制度として大げさに設計されたものではなく、相手の好みを知り、それに合わせて行動するという、日常の延長線上にある配慮だからこそ、自然に続いています。
食の面ではほかにも、農家とのつながりを活かしてお米を安く提供するなど、実習生の日々の生活を支える工夫が見られます。

来日から帰国まで寄り添う生活サポート

社屋リフォームの寮と日常の生活支援

同社では、社屋の2階をリフォームして実習生用の寮を整備しました。原則1人1部屋で、実習生が安心して暮らせる環境を用意しています。
日常の生活支援も手厚く、実習生の体調不良時には担当者が病院に同行します。
「今回もちょっと具合悪い社員が一人いるんですけど、『明日病院に連れてってください』なんていうLINEをいただいて、昨日病院一緒に連れてってみたりとか。」
ゴミの出し方も会社が指導しており、地域の生活ルールを丁寧に伝えています。

病院への同行について振り返るイルヴァン氏と飯田取締役
マイナンバーカード取得から脱退一時金の手続きまで-行政手続きの徹底サポート

同社の生活支援は、日常のサポートにとどまりません。来日時のマイナンバーカード取得から、帰国時の脱退一時金に関する手続きまで、行政手続きを一貫してサポートしています。
「マイナンバーカードも一緒に取りに行ってとか、そんなものも全部提供して。」
来日から帰国後の生活まで見据えた対応が、実習生の安心感につながっています。

LINEを活用した日常的なコミュニケーション体制

コミュニケーション面では、監理団体との月1回の定期面談に加え、担当者と実習生の間でグループLINEと個別LINEの両方を運用しています。
「基本、私たちに何でも言うようにという話をしていて」と担当者が語るように、ちょっとした相談や体調不良の連絡まで、LINEを通じていつでもやり取りできる環境をつくっています。フォーマルな面談だけでなく、日常的な連絡手段を確保することで、問題の早期発見と信頼関係の維持につなげています。

地域行事や宗教行事への柔軟な対応

同社では、実習生が地域社会との接点を持てるよう、地域のお祭りへの参加や建設業協会のゴミ拾い活動への参加を促しています。「せっかく来てくれたなら知ってほしい」という思いから、日本の文化や地域の暮らしに触れる機会を積極的につくっています。
宗教面での配慮も柔軟です。インドネシアはイスラム教徒が多い国ですが、同社では安全祈願の際に「ちょっと一緒に来てみる?」と声をかけたところ、イルヴァン氏も参加したとのこと。断食(ラマダン)についても、「やるのは構わないけど」と本人の意思を尊重する姿勢で対応しました。結果として断食を途中でやめた実習生もいましたが、それも本人の体調と判断を尊重した結果です。強制も禁止もせず、対話を通じて本人に委ねるという同社のスタンスがうかがえます。

「特定技能で戻ってきていい」-面接時から伝えるキャリアパス

同社では、技能実習生の採用面接の段階から、実習期間の「その先」を見据えた話をしています。「3年働いて、また一度帰国して、特定技能とかでまた来てもらって、一緒に働いてもらってもいいよっていうような話は、面接の時点でもしてます。」
特定技能への移行については、本人の意思を確認するプロセスを大切にしています。「『特定技能になったら他でも働けるけどどうする?うちにまた来たいっていうなら、全然ウェルカムですよ』っていう。そういう話は毎月させてもらってました。」
選択肢を示した上で本人に決めてもらうスタンスが、信頼関係の土台になっています。
こうした取組の結果、1期生3名のうち2名が特定技能への移行を予定しているとのこと。イルヴァン氏も「同じ仕事を続けたいです」と話しており、技能実習から特定技能への好循環が生まれつつあります。
待遇面でも、技能実習生の契約上は賃金アップの規定がない場合でも、「会社の業績とか、社長のご厚意とかで心ばかりではあるんですけど、ボーナスを出させてもらったり、毎年ちょっと賃金を少し上げさせてもらったりする場合はある」と担当者は話します。制度上の義務を超えた対応が、実習生の「この会社で働き続けたい」という気持ちにつながっていることが見えてきます。
また、同社はInstagramで現場でのローラーの練習風景や社内イベントの様子を発信しており、働く実態を外部にもオープンにしています。

同社で活躍する外国人社員の皆さん(写真:会社提供)

率直に語る課題-先輩が通訳することで後輩の日本語が伸びないジレンマ

多くの取組を進める俊光建設ですが、担当者は課題についても率直に語ります。
「課題としては、はっきり言って痛感しているのは『言葉の壁』ですね。早めに入った先輩がインドネシア語で教えたり、通訳みたいな形になっちゃうんです。」
先に入社した1期生が後輩である2期生に母国語で通訳することで、業務上のコミュニケーションは円滑に回る一方、2期生が日本語を積極的に学ぶ機会が減ってしまう。この構造的なジレンマを、担当者はこう表現します。
「それはそれで、2期生の子が日本語を勉強しない。よくある話ですけど、日本語上達が遅いんですよ。自分たちも悪いとは思うんですけど、そこに頼っちゃうから。」
現場の効率と日本語学習のバランスという、技能実習生を受け入れる多くの企業に共通する課題を、同社も試行錯誤しながら向き合っています。その対策の一つとして、担当者は茨城県が提供する「外国人向け日本語学習支援e-ラーニングシステム」の活用を検討しています。市役所でチラシを見つけたことがきっかけで、スマートフォンでいつでも学習できるこのシステムを、日本語が伸び悩んでいる実習生の学習支援に役立てたいと考えているそうです。

茨城県外国人受入優良企業等認定制度への応募

同社は、茨城県が創設した「外国人受入優良企業等認定制度」にも申請し、2026年2月に優良企業として認定されました。きっかけは、茨城県労働政策課から届くメールマガジンでした。
「建設業界を盛り上げていくために申請してみようかな。」
建設業界を盛り上げていくため、先駆けとなりたいという意識で申請を決めたと担当者は話します。自社の取組が認定を通じて可視化されることで、業界全体の外国人材受け入れの機運を高めたいという前向きな姿勢がうかがえます。

株式会社俊光建設の取組ポイントまとめ

同社の取組から、外国人材の受入体制を整備する際のアクションリストとして、以下のポイントが参考になります。

雇用契約書・給与明細を実習生の母国語で整備し、面接時から手取り額まで明示する

的機関が公開している多言語資料(技能実習生手帳、年金機構の資料等)を積極的に活用する

安全標識を多言語で併記し、安全教育(指差し確認、避難訓練等)を母国語でも理解できる形で実施する

専門の翻訳がなくても、担当者が自ら調べて対応する姿勢が重要

実習生の食文化を把握し、日常の福利厚生に反映する

「鶏の日」のように、相手の好みに合わせた小さな配慮が、安心感と帰属意識を育てる

寮の整備、病院同行、行政手続きの代行など、生活全般のサポート体制を構築する

来日時だけでなく帰国時(脱退一時金の申請支援等)まで一貫して対応する

LINEなど日常的な連絡ツールを活用する

LINEなど日常的な連絡ツールを活用し、フォーマルな面談以外にも相談できるチャネルを確保する

地域のお祭りや清掃活動への参加を促し、地域社会との接点をつくる

宗教行事への対応は、強制も禁止もせず本人の意思を尊重する

面接の段階から、技能実習後のキャリアパス(特定技能への移行等)を具体的に伝える

本人の意思を確認した上で受け入れるスタンスが、長期的な信頼関係をつくる

eラーニング等を活用して日本語学習の機会を補完する

先輩実習生が後輩に通訳するメリットとデメリットを認識し、eラーニング等を活用して日本語学習の機会を補完する

担当者の声

取材を通じて印象的だったのは、同社の担当者が取組の成果と課題の両方を、飾らない言葉で語ってくれたことです。
当初は懐疑的だった50代のベテラン従業員たちが、1ヶ月で「子供みたいなもの」と可愛がるようになった変化。休日に自発的に買い物に連れ出す関係性。帰国を控えた実習生が忘年会の場で日本語で挨拶をした場面。一つひとつのエピソードに、日々の関わりの積み重ねが表れています。
実習生本人も「同じ仕事を続けたいです」と話しており、この言葉が、同社の受入体制が外国人材にとってどのような環境であるかを物語っています。

外国人材の採用・受入体制の整備でお悩みの企業様へ

株式会社俊光建設のように、外国人材の採用や受入体制の整備に取り組みたいとお考えの企業様は、茨城県外国人材支援センターにご相談ください。
センターでは、専門のアドバイザーが常駐し、在留資格の選定から採用活動の進め方、受入後の定着支援まで、企業の状況に応じた伴走型のサポートを無料で提供しています。「何から始めればいいか分からない」という段階からでもご相談いただけます。

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