スターエンジニアリング株式会社

外国人材の採用の取り組みにおける事例/留学生受入体制の整備と定着支援

会社概要

会社名:スターエンジニアリング株式会社
所在地:茨城県日立市
事業内容:非接触ICタグ・ICカード等のRFID製品、DCモーター等の設計・開発・製造

今回お話をうかがった方
代表取締役

星哲哉さん

茨城大学や筑波大学をはじめ、茨城県内の大学に在籍する外国人留学生のなかには、日本での就職を希望している学生も少なくありません。しかし、言葉や文化の壁に加え、外国の学期制度に多い「9月入学6月卒業」のタイミングと、日本企業で一般的となっている「新卒採用は4月入社」というタイミングがマッチしないことも、留学生が日本で就職活動をする際の障壁となっています。

日本語能力よりも専門的な能力の高さに注目し、資格切り替え時の費用負担や入社月の調整など留学生ファーストの柔軟な対応で信頼関係を築き、即戦力として活用するスターエンジニアリング株式会社の取り組みをご紹介します。

今回お話をうかがった、代表取締役の星哲哉さん

外国人材採用のきっかけ

スターエンジニアリング株式会社は、マイクロモーターや各種コイル、自動認識システムに欠かせない非接触ICタグなどの設計・製造・販売までを自社で手がける技術系の中小企業です。設計、開発、プログラミングなどの業務を担う優秀な技術者を求めつつも、専門知識や技術を持つ優秀な人材の獲得は競争率も高く、思うように人材獲得ができない状況でした。
同社とイラン出身のベナンさんとの縁がうまれたきっかけはハローワークからの電話でした。星さんがとくに興味を持ったのは、ベナンさんが茨城大学大学院の留学生という点です。
「彼は日本語があまり話せないということでしたが、院卒クラスの優秀な学生からの応募はめったにないことなので、とにかく一度面談を希望しました」と話す星さん。本人と面談したところ、スキルの高さだけでなく人柄や「日本で働きたい」という熱意も十分に感じられたことから採用の意思を固めました。
とはいえ、外国人材の採用は初めての経験であり、在留資格の要件や雇用契約に必要な手続きなどわからないことばかりだったため、大学を通じて茨城県外国人材支援センターへ相談しました。

留学生の専門性をいかし、即戦力として活躍できる場を

国籍や日本語能力にとらわれず、個人の能力に注目

今回の事例のポイントは、国籍や日本語能力にとらわれることなく、「優秀な人材だから来てほしい」とシンプルに捉え、企業側が積極的に受け入れ体制の整備や定着へ向けての環境づくりに取り組んだことです。
受け入れ体制の整備については、支援センターを通じて行政書士に相談し、技人国(技術・人文知識・国際業務)の在留資格にて受け入れが可能であることを確認したうえで資格変更の手続きを行うとともに住まいなどの生活環境も整えました。
在留資格の変更手続きにかかる費用を同社で全額負担するなど、ベナンさんにできるだけ負担をかけずに迎え入れようとする姿勢は本人にも伝わり、その後の会社への信頼感や帰属意識の高まりにつながったようです。
定着へ向けての環境づくりでは、支援センターのアドバイザーからの「留学生は、これまで学んできた専門分野に関連の深い業務を希望する傾向がより強い」というアドバイスをふまえ、ベナンさんが持つPLC制御という専門性を活かせる仕事を任せることでやりがいある環境を用意しました。
また、インターンを実施して本人の希望やイメージと実際の職場や職務にギャップがないことを確認するとともに、星さんの自宅にて数ヶ月間下宿生として迎えることで親睦を深め、神の教えによって食べ物などに一定の決まりがあるハラールへの異文化理解も深めるなど、入社前にも丁寧な準備を行いました。

日本語能力の課題をカバーする、専門性とスキルの高さ

設計開発部門に配属されたベナンさんの活躍ぶりは目覚ましく、たとえば、工場を案内した際には11工程のうち自動化すべき箇所をピンポイントで挙げ、PLC制御のスキルを見事にいかして改善策を提案したそうです。
星さんは「とにかく優秀のひとことです」と期待以上の能力を手放しで評価するとともに、不安材料だった言葉の壁についても、「仕事をするうえで大きな影響は感じていません」と言葉を続けます。
その理由のひとつは、モーターやACなど仕事に関係する単語は英語が多く、技術的なことについての話題なら日本語で話してもおおよその内容は伝わるためです。さらに、細かい指示など正確に伝わっているか不安があるときは文章にして翻訳ソフトを通せば問題なくやりとりでき、ここで発生する多少の手間やタイムラグもベナンさんの総合力にとってはささいなことだそうです。
また、英語の得意な社員の存在も助けになり、星さん自身や他の社員が改めて英語を勉強したり、ベナンさんに日本語教育の場を用意したりといった特別な対策は必要なかったそう。日本語ができない人と仕事するのは無理と決めつけず、専門知識や能力に注目した星さんの選択が良い結果につながりました。

ベナンさん(左から2人目)ら、留学生の皆さんと星さん

期待以上の活躍に、留学生の価値を実感

留学生が人材として大きな魅力を持つことを知った同社では、ベナンさんに続いて、支援センターからの紹介を通じて筑波大学の研究生も受け入れました。また、モンゴルからのインターン生(新モンゴル学園)の受け入れも決定しており、今後も優秀な人材の獲得へ向けて留学生や外国人材の採用に積極的に取り組んでいきたいとの考えです。
さらに、彼らの母国とのネットワークを得たことで、新たな技術交流の場や海外への事業展開の足がかりが生まれることも期待されます。母国から離れた地で頑張り、日々成長する彼らの姿は会社にとっていい刺激にもなり、「より高いレベルで活躍してもらえるよう、当社もさらなる高みを目指して成長し、ともに向上していける関係を続けていきたいです」との星さんの言葉に、外国人材への期待と敬意が表れています。

スターエンジニアリング株式会社の取り組み例

留学生採用における取り組みのポイント
  • 大学のキャリア支援室や茨城県外国人材支援センターと連携し、企業単独では難しい留学生個人とのつながりを深めた
  • 在留資格切り替えにかかる費用を企業が全額負担し、住居の契約など生活環境の準備も親身にサポートした
  • 行政書士相談などのサポートを活用することで、在留資格の確認や切り替えなど初めての手続きも円滑に行なった
  • インターンや面談を通じて留学生の専門性や希望と実際の職務にギャップがないことを採用前にしっかり確認した
  • 専門性を活かせる仕事を与え、即戦力として活躍できる環境を整えて受け入れた
採用担当者からの声

外国人材の雇用は初めてなので言葉や文化の壁に不安はありましたが、大学や支援センターという、会社と留学生にとって共通の拠り所があったことが心強い支えになりました。
長く勤務してもらいたいので、今後も支援センターから情報やアドバイスをもらいながら定着を図っていきます。また、居心地よく過ごせる環境づくりも定着にとって大切と考え、彼らの母国語であいさつを交わす、ハラールの大切な習慣であるお祈りの時間用に経理室を開放するなど、身近なことから取り組みを進めています。

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