留学生の専門性をいかし、即戦力として活躍できる場を
国籍や日本語能力にとらわれず、個人の能力に注目
今回の事例のポイントは、国籍や日本語能力にとらわれることなく、「優秀な人材だから来てほしい」とシンプルに捉え、企業側が積極的に受け入れ体制の整備や定着へ向けての環境づくりに取り組んだことです。
受け入れ体制の整備については、支援センターを通じて行政書士に相談し、技人国(技術・人文知識・国際業務)の在留資格にて受け入れが可能であることを確認したうえで資格変更の手続きを行うとともに住まいなどの生活環境も整えました。
在留資格の変更手続きにかかる費用を同社で全額負担するなど、ベナンさんにできるだけ負担をかけずに迎え入れようとする姿勢は本人にも伝わり、その後の会社への信頼感や帰属意識の高まりにつながったようです。
定着へ向けての環境づくりでは、支援センターのアドバイザーからの「留学生は、これまで学んできた専門分野に関連の深い業務を希望する傾向がより強い」というアドバイスをふまえ、ベナンさんが持つPLC制御という専門性を活かせる仕事を任せることでやりがいある環境を用意しました。
また、インターンを実施して本人の希望やイメージと実際の職場や職務にギャップがないことを確認するとともに、星さんの自宅にて数ヶ月間下宿生として迎えることで親睦を深め、神の教えによって食べ物などに一定の決まりがあるハラールへの異文化理解も深めるなど、入社前にも丁寧な準備を行いました。
日本語能力の課題をカバーする、専門性とスキルの高さ
設計開発部門に配属されたベナンさんの活躍ぶりは目覚ましく、たとえば、工場を案内した際には11工程のうち自動化すべき箇所をピンポイントで挙げ、PLC制御のスキルを見事にいかして改善策を提案したそうです。
星さんは「とにかく優秀のひとことです」と期待以上の能力を手放しで評価するとともに、不安材料だった言葉の壁についても、「仕事をするうえで大きな影響は感じていません」と言葉を続けます。
その理由のひとつは、モーターやACなど仕事に関係する単語は英語が多く、技術的なことについての話題なら日本語で話してもおおよその内容は伝わるためです。さらに、細かい指示など正確に伝わっているか不安があるときは文章にして翻訳ソフトを通せば問題なくやりとりでき、ここで発生する多少の手間やタイムラグもベナンさんの総合力にとってはささいなことだそうです。
また、英語の得意な社員の存在も助けになり、星さん自身や他の社員が改めて英語を勉強したり、ベナンさんに日本語教育の場を用意したりといった特別な対策は必要なかったそう。日本語ができない人と仕事するのは無理と決めつけず、専門知識や能力に注目した星さんの選択が良い結果につながりました。
ベナンさん(左から2人目)ら、留学生の皆さんと星さん