グランソールベーカリー株式会社

外国人材の採用の取り組みにおける事例/日本語教育のサポート

会社概要

会社名:グランソールベーカリー株式会社
所在地:茨城県神栖市
事業内容:セブン-イレブンのオリジナルパンの製造・販売

今回お話をうかがった方
工場次長

平野哲也さん

業務課 ユニットリーダー/技能実習生生活指導員

松本梨恵さん

外国人材を活用するためにはいくつかのポイントがあります。なかでも円滑なコミュニケーションの実現は重要であり、そのためには外国人材の日本語の理解度を高めることが必要です。
茨城県が無償提供する外国人向け日本語学習支援e-ラーニングシステムを活用し、日本語教育を進めるグランソールベーカリー株式会社の取り組みをご紹介します。

今回お話をうかがった平野さん、松本さん

勉強熱心な技能実習生の姿勢に感動

外国人材採用のきっかけ

グランソールベーカリー株式会社は、昭和産業株式会社のグループ企業としてパン生地の製造などを手がける食品製造業者です。
2017年の創業当時は、社員、パート社員ともに全員日本人でしたが、2018年3月にフィリピンから5名の技能実習生(以下、実習生と表記)を受け入れて以来、継続的に受け入れを行っています。

採用のきっかけは、同じ昭和産業グループの企業が実習生を受け入れ活用してきた実績があり、それらの会社から実習生の評判を聞いたことでした。
「とりわけ、フィリピンからの実習生は仕事にも勉強にも熱心に取り組んでくれると聞き、製造ラインの増員補強などを見越して募集を決めました」と、工場次長の平野さん。
製造や販売などパンに関わる経験を持つ人を条件に現地での募集や面接をおこない、20代半ばから30代前半の女性5名を受け入れました。

 

工場の様子
入社当時の実習生たち

 

日本語が必要な環境でみるみる上達

グランソールベーカリーにおける実習生の1期生となる彼女たちの入社時の日本語レベルは、あいさつなどの会話とひらがなの読み書きがなんとかできる程度でした。一方、実際の作業を指導するパート社員は全員日本人で、会話に使われる言語も機械の操作盤の表示もすべて日本語という環境でした。
「社内では日本語を使うことを原則とし、朝礼時の伝達事項や指示も日本語のみで伝えました。仕事をするには日本語を覚えるしかない環境の中、とても勉強熱心な彼女たちはみるみる日本語力が高まっていきました」と松本さんは振り返ります。

また、熱心に勉強に取り組む姿勢が伝わるこんなエピソードもあります。
「毎日ひとりひとつずつわからない単語をノートに書いて覚えるということに自発的に取り組んでいました。5名分なので、それぞれが毎日5つ新しい日本語を学習することになり、成長は目覚ましかったですね。業務の面でも、できない作業は家で練習するなど、ほんとうに勉強熱心で素晴らしかったです」

 

仕事にも日本語学習にも熱心に取り組む
社内で行われる卒業式

外国人向け日本語学習支援e-ラーニングシステムとの出会いと褒めて伸ばす姿勢

外国人材の増加とともに感じた日本語学習の必要性

同社では、翌年以降もフィリピンからの実習生を受け入れましたが、母国語を話せる先輩や仲間が多くなるにつれ日本語習得のスピードが落ちていると感じるようになり、現場でも指導に時間がかかるとの声があがるなど、日本語学習の仕組みづくりが必要となりました。

何か良い方法はないかと模索するなかで見つけたのが、茨城県が県内企業および在住外国人へ向けて無償で提供する「外国人向け日本語学習支援e-ラーニングシステム」でした。これなら、外国人は好きな時間にレベルに応じたさまざまな日本語学習を受けることができます。
「スマホを使って少しの時間でも自分のペースで勉強できる手軽さや、無料で利用できる点も魅力的でした」と早速導入し、自発的な日本語学習のきっかけづくりを目指しました。

学習意欲を高めるために「褒める」ことを徹底

導入当初はシステムを利用する人は少なかったものの、学習に取り組んだ人に対して「やる気があって素晴らしい」「がんばる姿勢が嬉しい」とみんなの前で褒めることを徹底しました。褒められた実習生はよりやる気を出して取り組むようになり、半年後には同システムの学習時間で茨城県内トップ5に入るまでに学習を重ねる実習生も現れました。
これはすごいとランキング表を構内に掲示し、工場長からの表彰状と記念品を贈呈するなどしてさらに褒め称えると、より多くの実習生が学習に取り組むようになりました。

実習生たちの日本語力が高まったことで、現場でも作業内容の伝達などがスムーズになり、作業のミスが減ったり、任せられる仕事の範囲が広がるなどの効果が生まれます。
実習生からも「楽しく仕事ができるようになった」「日本人と会話ができるようになって日本がもっと好きになった」など、勤続意欲の高まりを感じさせる感想が多く聞かれました。

 

工場内にある掲示板に、外国人向け日本語学習支援e-ラーニングシステムのランキングを紹介
ランクインした人以外の、日本語学習に取り組んだ人の名前も掲示している
学習意欲を高めるために「褒める」ことを徹底
学習意欲を高めるために「褒める」ことを徹底
学習意欲を高めるために「褒める」ことを徹底

褒めることによりさらにモチベーションが高まり、周囲にも好影響を及ぼす

長く働きたいと感じてもらえる雰囲気づくりを

日本人社員との絆を深めるブラザー・シスター制度

同社では、ほとんどの実習生がより長く日本で働きたいと希望しており、その背景には日本人社員との良好な関係が大きく影響しているように感じられます。親交を深める一歩目となるのが、入社してきたばかりの1号実習生一人ひとりに対して、業務指導などにあたる専属の教育係をつけるブラザー・シスター制度の採用です。
入社後2ヶ月ほどは実務経験豊富なパート社員がマンツーマンで指導にあたる制度で、一人ひとりにしっかりと目を配ることができるため、個々の性格や作業の得手不得手なども把握しやすくなり、適材適所の配属につながります。
「パート社員にとっては生徒となった実習生が我が子のような存在にも感じるようで、社内での教育にとどまらず、休日に遊びに連れて行くなどとても可愛がってくれます。それに対して実習生も深い愛情を示し、卒業するまで『私の先生』と呼んで感謝の心を持ち続けています」とのこと。
この制度が、長く働きたいと感じられる環境づくりにもつながっているようです。

 

日本人社員との絆を深めるブラザー・シスター制度

 

在留期間延長という目標が、学習意欲の向上につながる

1号、2号実習生として働く期間に加え、さらに長く在留して働くためには3号実習生への移行や特定技能の在留資格を得る必要があります。それは多くの実習生が希望することであり、戦力として成長した実習生をより長く雇用できるのは同社にとっても大いに歓迎するところです。
「現在は当社でも特定技能の受け入れが実現し、40名の実習生に加えてミャンマーから50名の特定技能外国人を受け入れています」と、今後も外国人材の雇用に意欲的な姿勢をみせる同社。2021年に3年間の実習を終えて一旦帰国した1期生たちが間もなく特定技能として戻ってくるという嬉しいニュースもあり、1号および2号実習生たちの間に「私も在留期間を延長したい」という気持ちが高まり、「そのためにも日本語を覚えて日本語検定(JLPT)のN4合格を目指そう」という空気が生まれているそうです。

現在、同社では全従業員のおよそ4割にあたる100名弱の外国人材が活躍中で、現場の戦力として欠かせない存在になっています。
「ゆくゆくはラインオペレーターのリーダー的業務なども外国人材に任せていきたいです。そのためにも、N3レベルの日本語力を身につけてぜひ特定技能2号の資格を得て欲しいですね」とさらなる期待を寄せるとともに、外国人向け日本語学習支援e-ラーニングシステムを活用しながら日本語学習支援に引き続き力を入れていきたいと展望を話してくれました。

 

実習生
実習生
実習生
実習生
実習生
実習生

日本人社員とも公私共に仲良く、地域にも溶け込む実習生たちは、もはや同社に欠かせない存在となっている

グランソールベーカリーの取り組み例

日本語学習支援のポイント
  • 工場内では日本語をつかうことをルールにする
  • 新人一人ひとりにマンツーマンで日本人の教育係をつけ、日本語で作業指導などを行う
  • 外国人向け日本語学習支援e-ラーニングシステムを活用する
外国人材にとっても雰囲気の良い職場づくりのポイント
  • 潮干狩り、バドミントンなど、社員やパート社員が実習生を誘って休日に遊びに出かけ交流を深める
  • 餅つきなど日本文化を体験できる社内レクを開催する
  • 1号、2号の卒業時にオリジナルのアルバムを作成して贈る
  • 働きぶりやミスの内容などを現場から業務課へフィードバックし、個々の技能レベルなどに応じた業務を割り当てる
やる気を引き出すためのポイント「勉強をしたら褒める環境をつくる」
  • 外国人向け日本語学習支援e-ラーニングシステムの学習時間を管理し、少しの時間でも継続して学習している人は「素晴らしい!」と褒める
  • 外国人向け日本語学習支援e-ラーニングシステムの学習時間ランキングの入賞者を毎月表彰し、賞状や記念品を授与する
    記念品:日本語検定の問題集や漢字練習帳など本人の希望に応じた学習用テキスト、ファストフード店のプリペイドカードなど
  • 朝礼を行う場所にランキングの入賞者を掲示し、朝礼後に社員やパート社員が「頑張っているね」と声をかけやすい環境をつくる
  • ランキング入賞者だけでなく、少しでも日本語学習に取り組んだ実習生の名前も掲示して褒める
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